星漢燦爛の少商と元漪の母娘関係

母親と娘は同調率が、双子の様に遺伝子レベルで繋がりが深い。それは母親と息子の比ではない。

しかし、星漢燦爛の少商はその母と生まれてすぐ引き離され15年も放置された子供である。

 

前回で生みの母より育ての母をとった少商に

母は自分が悪かったと、皇后が自主的に蟄居している冷宮へ行くなと叫ぶ。

 

色々な要因もあるけど、このママの間違いの根っこには娘への無意識な甘えがあると思います。

自分にそっくりな性格だけに、ついつい自分の分身のように感じてしまう。娘の考えも誰よりも分かるので、自分に厳しいママは分身である娘にも厳しくなってしまうのだろう。

 

愛しているのは当然の自分の気持ちで、言うまでもないし、態度に表すまでもない。

分身の如く愛しているし、大事なのだ。

だから、少商の大事な場面場面で誰よりも少商の最善を考え行動し守っています。

アーヤオと婚約の時も、破談の時もそう。

凛不疑との成婚へのそれぞれの段階でも、そう。

常に娘の先々の幸せだけを考えて娘や周りがどう思うとも関係なく行動する。

娘が、本当に嫌なら全てを投げ捨てても守るから結婚しなくても良いと。

敵討ちの夜も娘の意思を遂げてやるために、一家あげて戦った。

少商も母の自分への愛は色々な事件を乗り越えて分かって来た。

ただ、普通の娘が母親から当然の様に愛された時間が自分には与えられなかっただけ、と言う事も。

 

現在の日本でも両親とも働いている家庭の方が多いので、寂しい思いをしている子供は大なり小なりあると思うが、全く会えもしない親子はほとんどないと思う。

私の両親は共稼ぎで、母は小学校の教師だったので、子供の頃から学校行事に親が来てくれた事は一度も無かった。大抵、母の勤めている学校と行事など重なっているからでした。

親の顔を見るのは朝と夜の2.3時間だけと休みの日ぐらい。

足らない親子の時間を補うため、親の代わりに子守やお手伝いさんも雇い、私にはたくさんのお稽古事をさせて

それぞれ一流の先生を付けてくれました。

書道は有名な書道家の先生に。ピアノはショパン国際ピアノコンクールに出た芸大出のピアニストに。お茶やお花も地方都市では一番の先生に。

日本画院展の審査をしている日本画家の先生に。結婚して家を出るまで、習い事をさせてくれました。

お金と人脈使って、出来る限りの教師をつけてくれたと思う。

でも、教師なのに母からは学校の勉強とかは教えてもらった事がない。

わからない事があって母に聞くと、自分で調べろと本棚を指差しただけ。

本だけは山の様に家にあったが。

数えてみたが家には本棚が8つあった。しかも年末には大量に本を捨てる。本屋が御用聞きに毎月来るので、時々入れ替えるからだ。

子を替えて教えると言う言葉がある。

昔から、親の教師は良くないと言われていた事もあるから。

親子関係が悪くなる。子にとって親は甘える唯一の存在。その親から厳しくされるととても辛いから。

私はお陰で、子供時代の母の思い出はとても少ないが、私を甘やかしている優しい顔が記憶に残っています。

少商の母もまずはたっぷりと甘えさせてあげたら良かったのに。

娘に再会できた時はすでに、嫁に出さないといけない年齢になってしまってて、早く躾けなければと焦ってしまったのが、間違いだったのでしょう。そして血が繋がった娘だから、わかってもらえると過信したのが間違いでした。

 

 

少商の母も自分で躾をするのは諦め娘の教育は投げ出して、皇后様に任せることに。

皇后はと言うと、身分の高い家では子供は自分では育てず、乳母や教育係がするので

庶民の様に自ら教育するのは少商が初めてであったろう。

愛したい心と愛されたい心がお互いを母娘の様に結びつけ合う。

少商の母にとっては、本当に辛い展開でしょう。

15年前に捨てた子に今度は自分が捨てられたわけですから。

いや、これは親を捨てたのではない、自立したのです。

皇宮の門での親子の別れは娘の親離れ、母の子離れのシーンなのです。

いつかは去っていく子供ですが、母親にとっていつまで経っても、死ぬまで子供は子供。

大丈夫。娘はちゃんと帰って来ます。本当の意味で大人になったら、母の事がちゃんと理解できて、自分も母親になると親の気持ちもわかって

様々な事が許せる様になるから。

 

その点、同じ見捨てられた子供でも袁公子はちかくにいて会う事も出来るのに、彼の母は子に無関心で本当の意味で捨てられた子であり、少商よりずっと闇深いです。息子ゆえに娘ほど母親の気持ちは分かりづらいと思います。

ちょっと捻くれてはいるけど、よくぞ良い人間に育ったものです。

 

貴族社会に於いてはそう言う親子関係はよくある事なのかもしれません。

 

元々貴族ではなく成り上がりの程家だからこその、暖かい家族なのでしょう。

 

家族愛に飢えた凛不疑や袁慎が少商を似た者同士と言いながらも、闇夜を照らす一灯のように惹かれて手放せないのも分かるような気がします。

彼らにしたら、少商の母は必死で子供を守り愛してくれる母の姿、欲しかった母そのものなのでしょう。

 

5年の月日と周りの人達の思いが、冷宮で引きこもり不幸に囚われている少商を引き摺り出してくれました。

 

これから少商が母や不疑を許すことで、自分の人生も取り戻していけると良いなと思いました。