長相思 30話31話 小夭、死に瀕す

木斐によって絶死の陣に誘い込まれ、磔のように惨殺される小夭。

皆、遅いじゃないのよ!

いち早く気づいたのは情蠱を入れている相柳ですが、一番遠い反乱軍の陣営にいて、毛球に乗って駆けつけようとします。情蠱のせいで小夭の受けた痛みを同じくその身に受けてボロボロになりながらも結界を破って更に傷だらけに。

時を同じくして父を亡くした時と同じ胸騒ぎを覚え小夭のもとへ急ぐソウゲン。

お守りが切れて小夭の危機を勘づいた塗山景。青丘の実家から駆けつけます。

探索能力に長けた塗山景が一番早く殺人現場に辿り着きますが、時すでに遅し。

小夭の息は絶えています。

 

ここで、この狐は必死に蘇生を試みますが、生き返らない為、共に死のうと火に巻かれます。

 

人間、危機に陥った時にその人の人間力というか、生き方が出るものです。

 

危機管理能力と言う点では、塗山景は100点中10点ですね。

蘇生を試みた点は評価出来ますが、それ以外は0点です。

道で倒れた人を見つけて、息をしてなかったら心臓マッサージと人工呼吸ですが、同時に救急車を呼びますよね。

一回、心マしても息を吹き返さなかったから、一緒に死にますか?

一緒に死ぬって何の役にも立たないし、次の救助の邪魔になるだけでしょう。

ここでの正しい行動は、すぐにこの結界から助け出して救助を要請することでしょう。

飼い犬でも主人が倒れたら、助けを呼びに行くよ。犬よりは賢そうなのになぜそれが出来ない。

 

実際にソウゲンは救助隊を引き連れて行き、助け出して思いつく出来る限りの事を実行にうつしています。

そして、多くの助けを求めて、高霊力者達から霊力を注ぐ事で、相柳の助けまで命を繋いだから、小夭は生きながらえたわけで、ソウゲンには100点をあげたいです。

敵の相柳とも休戦して唯一の頼みの綱である相柳に小夭を託したり、敵討ちも忖度無しにやり遂げた事も、大変立派で+100点追加したいです。

 

もちろん、命を削り小夭の介護をする相柳には、MVPをあげたいです。

この相柳こそ、健気そのもの。防風北での母親の為に400年介護したノウハウが、ここで生きてきます。

看護相柳については後で詳しく語りたいですね。

 

と言うか、やはりこのお話は妖の相柳との恋に落ちたお姫様の悲恋の物語だったのですね。

 

小夭の母と赤辰の恋物語でも、途中で一度、小夭の母は磔にされて死にかけ、赤辰は救助に間に合わないというエピソードがあります。

母と同じような道を辿っている小夭。

妖族に恋してしまうお姫様と言う輪廻から抜け出せるのか?

それには塗山景に頑張ってもらって小夭を幸せにしてもらわねばなりません。

 

なのに、この狐はなんとも情け無いんだよなぁ。

 

相柳もソウゲンも今回、凄くカッコよかったですよね!

相柳の迎えに来るシーンとか、血だらけで結構ボロボロなのに、どのシーンも痺れるようなカッコ良さ。

女を救う為に命を張る男ぐらい女心を鷲掴みにするのは無いよね。これぞ男というか。

男の本領発揮です。

男の力も権力も愛する者を守る為にあるのよ。

辰栄響悦が、ソウゲンが「自分の友や家族や自分の女は何があっても絶対守る!」と言ってくれて、その中に自分を入れてくれた事に感激して、泣く場面がありました。

男のお前を守るという台詞は有言実行でなければ

いけません。

小夭を守るように、自分が守ると誓った者たちの為には、今まで積み上げた功績も捨てて苦労をしても良いと。

 

なんと、感動する男の誓いでしょう!

女でなくても男の赤水豊隆も感激して、一緒に闘う事を誓います。

 

男気というのはこう言う事をいうのだよ、

聞いてるか?塗山景!

あ、聞いてないか、現実逃避して寝たきりだから。

 

男としてだけでなく、人間としての格が違いますよね。

塗山景の守るってそばにいてイチャイチャすることですか?

そばを離れたことからこんな事にって、言ってましたよね。側にいても助けれなかったと思うよ。お前の不甲斐なさでは。

 

ソウゲンからは塗山景はすっかりダメ男の烙印を押され、格下の小夭のペット扱いされ、面倒をちゃんと見るように配下に申しつけられています。留守の間の犬の世話と同じですよ。

 

親の年金で食い繋いでいた引きこもりのいい年した大人の男が、世話をしてくれていた親に死なれても、部屋から出る事ができず一緒に死んでしまったという話が時々ニュースになるけど、この狐はそれによく似ています。

これで、一緒に後腐れなくちゃんと死んだら良かったのに、生きる気力がないと言う状態で人様の世話になっているなんて、どこまで迷惑かけてるんだ?

まだ、余力有り余っていたから死にきれなかったんだよ。相柳のように死ぬまで霊力注ぎ込め!

 

普通のまともな人間ならさっさと起きて葬式やら後始末やらするよ。せめて塗山家と言う自分の責任だけでも果たしたらどうかな?

もう、本当にね、自分の事しか考えてないのが丸わかりだよ。

「一緒に死ぬなんて、健気だわ。ロマンチックだわ。」と言う人は塗山景と同じく自分勝手に生きている人。

周りの迷惑など、これっぽっちも考えていない人だと思う。

 

だって、死んだ小夭を発見した時、どこも怪我してないし、まだ火も出ていなかったし、ちゃんと脱出も出来る時だったよね。遺体だけでも運び出せるのに、一緒に死ぬって、どういうこと?

自立して自分の義務と責任を果たすのが死ぬより嫌なんかな?

自分の気持ちが一番大事で、小夭の弔いをしたり、敵討ちしたりは小夭の為にしないの?

引きこもりが親に死なれて、葬式も出さずに遺体もそのまま放置して事件になった事がありましたよね。

まともな人なら後追いするのでも、葬式をだしてからするよね。

守ると言いながら、依存しているだけでしょう。

小夭に抱きついたままだから、剥がすのに苦労かけてたシーンは依存や執着の強さを見るようで、

死んでも離れてくれないようで、ゾッとしました。愛しているのは自分だけなのよ。

長く生きていると、家族の命がかかっている様な場面に必ず遭遇します。その時に、頭をフル回転して、なすべき事を正しく実行する能力がないと家族の命は救えないのです。

どうしようと悩んでいるうちに時期を逸して手遅れになるんですよ。

 

ソウゲンは家族の命を守る為にずっと生きてきました。

彼が生きる目的は色恋よりも、権力よりも、この守りたい人を守るということに尽きると思います。

その為には敵の相柳をも信じて小夭を預けます。

蠱を引き受けたから、小夭の危機に飛んできたという相柳の事を怪しみますが、色恋云々を問うている場合じゃないと嫉妬心を押し殺します。

九命相柳だからこそ、救えるから。

そして相柳の言う、小夭とは生まれ方からして違うから、名節を汚すような事は無いという言葉を信じます。

まあ、友達以上のただならぬ関係とはここで気がついたことでしょう。

だって側から見ても、相柳には何の特にもならない小夭との付き合いです。

私から見ても、相柳はこんなややこしい女に引っかかったばかりに凄く損しているなと思うもの。

小夭と知り合って、恋を知ったこの蛇がその為に、命も捧げて全てを投げ打つかと思うと不憫で可哀想でたまりません。

客観的に見て、小夭は愛情深く優しいけれど、言うほど魅力的な女じゃあないぞ。

美しさも能力もはるかに相柳の方が上だしね。

蠱毒さえ入れてなかったら、どこぞの気立ての良い優しい女と楽しく幸せに暮らせたのに。

 

 

もう、こうなったら小夭は責任をとって治ったら、対外的には死んだことにして相柳と暮らしたら良いのに。それが二人にとっては一番幸せな結末ではないでしょうか?

でも、そうはならないのでしょうね。

何回も二人で幸せになる機会はあるのに、その道を選択出来ない二人です。

蛇と言うところがやっぱり大きいよね。

しかし、今回の看病で二人の血は完全に混ざり合いました。しかも、新しい小夭の命は相柳の命の一つですよ。前より強い小夭となり、復活しそうです。相柳の子供も卵で産めそうです。

塗山景に托卵して育てさせたら?

狐は子守りならできそうです。

おりしも、光る君へでは、紫式部道長の子を産んで旦那の宣孝に托卵しそうですし。

 

来週まで、寝たきりとはいえ、2人っきりの新婚生活ですね。

相柳にとってはその人生において一番幸せな時間なのではないでしょうか?