長相思 竣工式に仕掛けられた罠

祖廟修復事業が完成して、その竣工式がありました。そしてなんと、その瞬間、建物全体が崩れ落ちます。

これはソウゲンにこれ以上手柄を立てさせまいと企む五王と七王の陰謀による工作でした。

40年前に建物の設計図から、どこを崩せば建物全体が崩壊するか、わかっていて、白アリを仕込んで大黒柱を食い荒らさせたのです。

 

白アリ!

実は私の実家も築50年超えの鉄筋コンクリートでしたが、両親も亡くなり代替わりもしたので今月、取り壊して立て替える事に。

白アリに巣食われたのが、1番の原因です。両親が、従姉妹の旦那さんに設計してもらって田舎にしては最高の素材を取り寄せてこだわって建てた家でしたが、当時の建築基準では白アリ対策は不十分だったようです。

我が家も来年築10年を迎え定期リフォームをしますが、その必須項目は外壁の目地の塗り直しと白アリ駆除の薬の塗り直しです。基準の倍の高さまで塗っていますが、10年で薬功が切れるんです。

 

本当に建物を崩すのはシロアリが一番なのですよ。しかも、自然のものか人が仕込んだか分からないでしょうから。

タイミング的に人為的に倒壊させられたとみて捜査しますが、もう犯人は口封じで殺された後。

手抜き工事で、資金を横領したのでは?と捜査されることになります。

しかも、捜査は叔父達の息子。帳簿は塗山璟が付けているので抜かりはないのですが、私兵を養っていた事がバレると身の破滅に繋がります。

叔父達も上手い手を考えたものです。

タイミングからコウレイ王も西炎国王も真犯人はわかっていますが、この罠を上手く乗り切れ無いのでは、この先も無いと傍観する姿勢です。

資材調達は塗山璟が担当していましたが、37年間死に損なって寝たきりでしたからね。目覚めてからは小夭との恋愛に夢中で本来やるべき現場監督的な点検はやっていない模様。

私の実家は従姉妹の旦那さんが設計しましたが、ホテルや市庁舎も設計している優秀な設計士で、跡取り娘の従姉妹が金持ちの次男坊で優秀な一級建築士を従姉妹の美貌で落として、婿養子に入ってもらった人。設計事務所も建てて独立資金も用意されては婿養子でも良いかなって。婿養子って中々来てがいないのよね。

彼は私の実家が伯母さんの家ということもあり、特に力を入れて設計してくれたようでした。

また、手抜き工事や資材を誤魔化したりしないように、何度も点検に来て、注文した物と違うとやり直させたりしていました。大工さんにもよりますが、見えないところで安い物を使い稼ぐ者も多いのが、この業界の常なので、現場監督は設計士と共に細かくチェックします。

祖廟倒壊事件はこの現場チェックを怠った塗山璟に一番の責任があると思いますよ。

私も家を建てる時、何回か、現場の様々なチェックに立ち会いました。品質や素材の説明を受け、正しく使われているかどうか。チェックしました。

高価な買い物ですから、信用第一で、ホームメイカーも選びました。高い値段にはそれなりの理由があり、安物にはそれなりの理由があるのです。

小さな家でさえ、百人のチームで建てています。

お陰様で大変満足しています。地震でも気が付かず寝ていることも多いです。

塗山璟は引き渡しの時、立ち会いましたか?

族長就任のゴタゴタで、塗山氏を捨てるつもりだったし、就任してからも、小夭の後を追いかけるので忙しかったものね。

一応、赤水豊隆とは仲直りしましたが。

本当に赤水豊隆、人が良すぎるし、チョロいよ。

彼は本当に育ちの良いボンボンですよね。血筋とかで人の格付けをするのが当たり前の世界に生きているから、一応、母方の従兄弟に当たる塗山璟を全面的に信頼しています。だから血の繋がりのない塗山篁のことは最初から排除しているのですよ。

殴り合いの喧嘩でスッキリして元の友達に戻る二人。

やろうと思えばすぐに出来るんだよ、この狐は。

でも、兄相手には敢えてしないのが、これでわかりますよね。

ずっと自分を被害者にして、兄を常に下に置いて置く方が、一番自分の得になるからです。

卑しい血筋の兄がいる事で、益々自分の高貴さが引き立つわけですから。

ソウゲンは全部見抜いていますよね。竣工式に塗山璟の姿がありませんでしたが、これも、怪しいです。

倒壊を知っていて、責任を問われることを恐れて逃げたのかな?

もう一度建て直しとなると、二度美味しいしね。

塗山家は独占企業みたいなもの。

ロスチャイルド家などが、戦争の度に大儲けしているのと同じ。ディープステイトと言われる世界を牛耳っている大金持ち達は疫病、災害、戦争程、美味しい金儲けのチャンスは無い事をよく知っています。裏に彼ら大金持ちの一族がいるのは公然の秘密です。彼らも一族やその企業の社員達の生活を担っているから。

塗山氏は目に見える上っ面の綺麗な部分だけでなく、離戎氏の様な暗黒部を受け持つ氏族も配下において使っています。

そして、この度、代替わりした離戎氏をソウゲンに紹介して、自分の力をソウゲンにアピールします。いざとなったら、暗殺でも何でも汚れ仕事も出来ますよ。という事ですね。もし祖廟が倒壊しても責任も塗山璟に追求するなよ、と言う脅しでもあります。

防風意映と離縁したら塗山氏の軍事力が低下しますが、その代わりに離戎氏がいるので大丈夫とも。防風氏は五王、七王側ですから、ソウゲンにとっては離戎氏の方が使い安そうです。正道を行く一族で名声という事では防風氏の方が上ですが。

自分は請負業なので、直接手は汚さないと言う、悪辣ぶりです。

どうですか?皆さん。

これでもこの狐が、優しくて、健気で、可愛くてひたすら小夭への愛に生きる男と思いますか?

私は、狡賢い悪辣な、人を損得でしか見ない自己中なクズ男と思いますけどね。

赤水豊隆と大喧嘩して、怪我をしてボロボロになっても、嬉しそうに小夭から手当をされているのを見ると、むかつきます。狡賢い狐め、善良な人々を欺くのだけは上手いなと。

 

さて、色々と罠を仕掛けられたソウゲンを助けるために小夭と阿念がソウゲンの元にやって来ました。

父と姉に諭されても、どうしてもソウゲンへの恋心が抑えられない阿念です。この子は最初の印象から、ずっと大人になってきて、良い子に育ちましたね。

ソウゲンが阿念を妹の様に可愛がるのも分かります。裏表の無い純粋さ。これは得難い徳質です。そばに置くと自分の汚れた心が浄化される様な気がするのでは?

ソウゲンの為には、彼女こそ、妃にすべきですよね。一番心が安らぐのでは?

彼女が幸せになれるかどうかは別問題ですけどね。