長相思 家父長制の呪い

最近、小夭が現代の女性達を象徴している様に見えてなりません。

イケメンの男主達にも視聴者としてそれぞれに肩入れしてしまいますが、やはり主人公の小夭に幸せになってもらいたい気持ちが強いのは私が自分も女でしかも娘を持つ母親だからかもしれません。恋愛において男の幸せよりも女の幸せを願うから。

 

小六でいた清水鎮での性に縛られないでそれなりに自活していた時代は、まるで学生時代の生活の様です。

現代の女性達は社会に出る前は、自分の能力を信じていたし学校生活において学力で男女差別を受けたことはないと思います。

ある意味、学生時代というのは社会の荒波から守ってくれているので、能力さえ有れば男女関係ない世界。有名大学の卒業式で成績順で選ぶと女子ばかりが各学部の総代や成績優秀者で表彰されたりして、何故?と問題になったりしました。

入試で男女関係なく成績だけで合格者を取ると女子の方が多くなるから男子学生に高下駄を履かせた私立医学部もありましたよね。

同じ偏差値の学生を男女同数集めると女子学生の方が真面目に勉強するので成績が良いのです。

こういう優秀な女性も社会に出ると、女性だから被る荒波が幾度も襲いかかり、男ならこんな目に会わないのにと思う事もしばしば。

小夭も身分と本来の性を取り戻し女の人生が始まった途端、周りの見る目も変わり、自分も知らず知らずのうちに周りの常識や社会通念に影響されてそれに沿った行動や選択をしてしまいます。

 

まずは一番小夭を振り回して支配している従兄弟のソウゲンとの関係を見てみましょう。

大体、子供の時に二人のお祖母様の西炎国王妃から、二人でお互いに一生助け合う事を誓わされています。

これって呪いのようですよね。

おばあちゃんから一生に渡る誓いを強要されるって、いくら子供達の事を思ってな事としても、どうなるか分からない未来を決めつけられるのって、私なら我慢できない事です。

塗山景の婚約とかも、一生の問題なのに自分に決定権がなく、家長や長老にあるのも現代人なら我慢できますか?

でもつい最近まではそういう社会だったのですよね。親に言われるままに結婚もしていたのです。

私の両親もそうでした。

家長の権限や意思が大きくて、小夭もまずは父のコウレイ国王に

自由に結婚相手を選ばれるようにしてくれないと王姫には戻らないと交渉して、了解を得ています。

また、西炎国王である祖父からも好きな相手と結婚して良いと許可をもらっています。

つまり父方、母方両方の家長から許しをもらわなければ結婚はできないという世界観なのです。

自分の生き方について家長に決定権があるということを、小夭も当たり前の様に納得して当然のように受け止めています。

もちろん、あんたらに口出し出来る権利は本当は無いんだけど、一応、許可は貰っとくわというスタンスではありますが。

 

小夭が唯一家族と認めているソウゲンでさえ、小夭の事を一生守ると誓いながら、70年ですか?玉山に迎えにも行かず、文も寄越さず、自分の事を優先しましたよね。この時点で小夭を捨てています。後で探したのも罪悪感からでしょう。

そして小夭が従姉妹だとわかってからは兄として、守るべき存在となり、してやれなかった贅沢三昧や御馳走三昧など、いっぱいしてやると決めてました。

何が欲しいと聞いて最高級の物を取り寄せますが、小夭が欲しかった物は家族だったので、そういう物では無かったのです。

そして、その家族であるソウゲンの為に女にもなって身分を取り戻す覚悟を決めます。

これは家族という餌に釣られて付けられた足枷であり、家や一族という檻の中に入る事ですよね。

ここで、身分を取り戻し、本来の体も取り戻すまでは良しとしましょう。

でも、身分保証を貰い、ついでに黄金ももらったのだから、また旅に出ますと別れたら良かったんだよ。

清水鎮に帰って、相柳と駆け落ちすれば良かったんだよ。

だって、おばあちゃんやお母さんから誓わされた二人で助け合って生きなさいという誓いは、玉山に何十年も捨て置かれた時にもう反故になっている誓いでしょう。

それはソウゲンも父王も祖父も負目を感じているから、小夭には強要出来ない事なので、小夭に何度もそれで良いのか?と聞いています。

 

ソウゲンも最初は自由に本人の好きな生き方をして欲しいと思っていたと思うんですよ。

でも、女になった小夭が物凄い美女となって現れた時から、独占欲が湧いてきます。

お披露目前に小夭の容姿について聞かれても言わなかったり、お披露目会で小夭の美貌に見惚れる男達に、

どうよ、俺の従姉妹は。凄い美人だろうと自慢げですが、そのうち独占欲が湧いてきて不機嫌に。

塗山景が早速、権利を主張しに誘いに来るのも腹が立つ。

でも、その後、何回も小夭が自分の為に働いてくれたり命がけで救ってくれたりするたびに、恋愛感情に変わっていきます。

そして、その小夭の献身こそが、自分への愛情のバロメーターのようになり、やってくれて当然のようになってくるのです。

今、小夭に枕営業させているかのような自分を恥じていないのは何故なのか、理解に苦しみます。

あまりにも小夭が自分に尽くしてくれるので、調子に乗っているようです。

あくまで小夭の事には自分に権利があるから、男どもよ、兄の自分に予約入れて、金も払えよ、仕事もせいよ。と言う女衒に成り下がってます。

「お前は男がする計略や戦いはしなくていいから、防風北とでも遊んで来い」という言い草には本当に呆れ返りました。

 

ヤクザそのものですよね。女房を風俗で働かせヒモ生活をする。

今、何者でもないソウゲンはまさにこんな感じ。

今に若頭になって、ゆくゆくは組長にまでのぼりつめるから、それまで俺を支えてくれ。

と言っているのと同じ。

 

何で男に都合の良い女に成り下がっているのよ、小夭。

小夭にとっての家族という言葉は、男が囁く愛の言葉と一緒。

男に貢ぐなんて、女の下の下がやる事。

 

女に生まれたからには男になんぼ貢がせれるかが、女の腕の見せ所。

いくら塗山景や赤水豊隆に貢がせても、売り上げをごっそりソウゲンに持っていかれてるじゃん。

小夭が我が娘なら「何をやってんのよ、目を覚ませ!」と張り飛ばすところです。

 

皆さんの周りにも夫や息子や父親や兄弟を、男ってそういうものだからと、甘やかしていつのまにか色々としてあげるのが当たり前になってきて、家事手伝いを何もしなくなって女がするのが当たり前となっている男はいませんか?

 

男は絶対に甘やかしてはいけません。

男の機嫌もとってはいけません。

男の方に甘やかされて機嫌も取らせる女になるのです。

とても美人で性格も良くて働き者で料理も上手くお嬢さん育ちの非の打ち所がない友達がいました。夫に尽くすタイプでご主人もそういう妻が自慢でした。

でも、浮気したのよね。

私の知っている浮気され妻は皆このタイプ。

出来過ぎる妻は飽きるのです。

妻に美味しいものをご馳走したり、着飾らせたりする夫は、他所の女に使うお金と体力は無い、勿体無いと感じるようになります。

時々、あれが食べたい、これが欲しい、あそこへ行ってみたいなどと要求するのです。

絶対に勿体無いからいらないとか、後で返してくれたらいいからとか言ってはダメ。

悪妻こそが良妻。

女に色々と要求されたらそれを満たしてあげようと男は頑張るものです。

自分の幸せは妻子が幸せである事と思えるように。実際、老齢期になると、妻や子供達孫達に囲まれてレストランで食事をしたり、旅行に行ったり、買い物を夫婦でしている夫達は皆、幸せそうです。男の最大関心事だった仕事を引退して老いても、愛する家族がいるから。

家族を愛して頑張った男だけが、家族から愛される人生を送れるのです。

だから、妻や子供の為に色々な家事育児をいっぱいさせるのです。

家事育児をしない男は、ほぼ浮気していると思って良いです。本当に賢い妻は休みの日には夫を使い倒しています。

私も育児疲れの若い頃は、土日は寝溜めしたいからと、育児家事を放棄して昼ぐらいまで寝ていました。代わりに夫がせっせと子供の面倒を見て、お昼ご飯を作ってから、私を起こしに来ます。

男もやれば出来るんです。

 

小夭はソウゲンにとって、悪妻ではなく、一見良妻に見える出来過ぎる使い勝手の良い女になってますよ。

まさに家父長制の呪いにかかっているようです。

自分の一族の女達の幸せは俺が守るから、みんな俺の言うことを聞けよと思ってそうです。

小夭、兄さんとしか思ってないんでしょう?

兄さんにそこまでする妹ってキモいよ。

なんで男の夢を叶える為に必死で尽くすのよ。

自分の夢のために必死になりなさい。

もう、十分尽くしたから、義理は果たしたと思うので、しばらく旅に出ますと言うべきです。

これ以上、従兄弟の兄さんを堕落させてはいけません。

 

塗山景との関係では、小夭はまるで母親代わりになっています。

うちの犬は1年間調教師さんに出張トレーニングをお願いしたので、とても躾が行き届いていて、トリミング屋さんでは「指示待ちのランちゃん」と言われて可愛がってもらっています。

犬なら指示待ちでちゃんと言うことを聞くのは良い事ですけど、夫や恋人ならどうですか?

いちいち、はい、これをして、次はこれ。それはまだ。などと指示しない限り自ら動こうとはしない。やり方が分からなかったり、キャパオーバーしたらすぐフリーズしてしまう。

これを子育て中にやられると、もうイライラして邪魔!ってなりますよね。

こういう男は母親が甘やかして何でもやってあげたせいだろうか?

女の子しか産まなかったので、男の子を甘やかす母親の気持ちが、どうも私には分からないです。

 

だから塗山景が可愛くて好きという女性ファンの気持ちもさっぱりわかりません。中の人が好きというのならわかりますけど。

このキャラのどこが良いのやら。

こいつの本質は引きこもりの精神年齢の低いマザコン男だよ。

でも、このタイプは世間には普通にいっぱいいて見た目の良さやソフトな物腰が優しく見えて、付き合いやすいので、ついうっかりとこのクズ男を引いてしまう女のどれほど多い事か。

結婚して子供が出来てから大後悔するタイプ。

そして離婚する原因がいつまで経っても父親にならない夫。というやつです。

子供の着替えに忙しい時、髪の手入れが上手くできないから梳いてと、櫛をもって大きな図体で甘えてこられたらどうしますか?

自分の事は自分でせーよ!

今回も最初に小夭と塗山景のイチャイチャシーンで、髪の手入れをしてあげるというのがありましたが、そもそも、この狐は自分で手入れをしていましたよね。それを私がしてあげると言い、じゃあ今度から君がやってくれと言われて喜んだりする。

本当に馬鹿だよね!

母親でも幼児期に身の回りは自分でさせるように躾るよ。

恋人なら、撫でて欲しかったら、ピカピカに磨いてこいと言うべきです。

相柳に会う時は小六の時でも風呂に入ってピカピカに磨いてたでしょう。デートの前には男もしっかりとおしゃれしてこい。

相柳に「風呂に入って来たか?」と聞かれた時、皆さん、エロい展開を想像しましたよね。

今から思うと、この狐との対比のために、あの相柳のセリフをぶっ込んでと言うか仕込んでたのね。

凄いわ、トン・ファ。数少ない相柳のセリフの一つ一つには多くの意味が潜んでいる。

血を吸う行為が、二人にとっては性行為そのものなのでした。

 

恋愛関係にある時の身繕いは恋する相手の為に自らするものです。

そして事が終わった後に、さっさと帰るのではなく、本当に愛しているならば別れ難く朝まで過ごし、寝乱れた髪を梳いてやり、消えてしまった眉を描いてやる。そういう男が最高の男なのです。

まだやる事もやれていないのに、

髪の手入れをしてくれとは、狐は小夭を女ではなく母親としてみている証拠ですよ。

 

今時、家事育児の出来ない男は家の躾がなっていないと思われます。男の子の親は子供のうちからちゃんとしつけましょうね。

犬や猫を飼い、自分以外の他者を愛する心も育てましょう。

そうしたら女性も愛せるし、子供も愛せます。

 

さて、我らが相柳ですが、家父長制の呪いともマザコンとも無縁ですね。

ただ、まずは契約を取り交わしてからでないと関係は結べません。

報酬はただ一つ、心です。

見返りを求めない、相手の幸せだけを願っている純粋な愛です。一心同体の情蠱を入れた者同士。契約を結んでいるのに、何故、小夭は戻って来ないのか?騙したのか?縁を切るというのか?去れと言うのか?

相柳の側から見ると、小夭は結構、酷い女ですよね。

小夭は自分が追いかけていて、好きなのも自分の方と思い込んでいるから、自分の方から愛していると言っていませんよね。

好きならやはり自分の方から好きと言葉にしないと、本当に好きな男は手に入らないですよ。

人から好きなのかと聞かれても、そんなんじゃないと言ってしまう。

 

恋する相手に相応しくないから?

どうしてそう思うのか?

それはソウゲンの敵方だから?

西炎国やコウレイ国とも敵対しているから?

それってソウゲンや父親や祖父の家父長制の価値観からそう思わされているだけではない?

自分の敵ではないでしょう。

自分自身の価値観ではどうなのよ?

種族が違うから?

でも初めての友達は蛇だったでしょう。

初恋も蛇なんだから気にしてないでしょう。

それにまだはっきりはしてないけど、赤辰の娘ならハーフだよね。

 

小夭は身分を取り戻し女に戻ってから、あまりにも、神族の価値観に振り回されていて、自分を見失っている気がします。

自分らしく生きる為に、また放浪の旅に出るのが本当は良いと思いますけど、苦労した分、安楽で平凡な道を選ぶんだろうなと、思って少しがっかりな気持ちです。

楽だと思っていたその道もソウゲンやその他の男達という人任せになって、自分で自分のために歩いていなかったら、どんどん不満が溜まり不幸になっていく事でしょう。

 

自分の人生なのだから自分の為に生きなさいよ。