長相思 天下統一の志

長相思を見始めた頃、始皇帝も視聴して、そろそろそちらも終わりを迎えております。

こちらも大変面白くて、史実に忠実に描かれていて、しかもとても丁寧な脚本で大満足でした。

主役が三体のナノ物理学者の方で、流石に10代の頃はきついなとおもいましたが、演技力でねじ伏せ、天下統一間際の今は堂々たる皇帝のカリスマを漂わせております。

この始皇帝の感想はいずれ書くとして、この秦国において、若くして国王となった嬴政が、どのようにして国をまとめ挙国一致で、天下統一を成し遂げて行ったかをずっと見ておりました。

 

二十歳で実力で親政を執る事が出来たのは、なんと言っても、常に他の六国を平らげ天下統一を果たすと言う大目的を掲げたからです。

中華において、天下統一はなさねばならぬ大命題。それが出来る国は代々唯一の法治国家で天下統一を目指す優秀な国王が何代も続いて国力も大きい秦以外には無いと言うのが、文人達の皆が思うところです。

そして、その秦に若く優秀で天下統一の強い意思のある国王が誕生した。嬴政です。

時と人と運が全てが揃った今、この嬴政に命とその才能を賭けようと自国のみならず、各国からも人々が集まって来たわけです。

 

この長相思での時代設定は中国初の王朝を開いたとされる禹が、ソウゲンに当たると言うことで、夏王朝の始まりですね。前にも言いましたが、秦の前に周。周の前が殷。殷の前が夏と言われています。

夏王朝は古代神話の架空の世界と思われていましたが、色々と出土品がでて、実在した一番古い王朝と最近では認められております。

何故、神話の架空の王朝と思われていたかは、伝説的な神々の名前が出てくるからです。

相柳や共工ですね。

そして、長相思の時代背景が、相柳の名前によって確定されました。

日本の古事記では相柳は八岐大蛇に当たりますが、この古事記は中国の神話から来ていると思われます。中国では九が最高を表す数字で、日本では末広がりと言うことで八とされています。

治水こそが、人類の最大の命題ですので、それの象徴です。

水は命の源だから、水無くして生き延びることはできません。

だから相柳や八岐大蛇を退治すると言うことは治水に成功したと言う事ですね。

天下統一を掲げている限り、治水は絶対に欠かせません。始皇帝になる前の嬴政も親政を摂りはじめた頃から大運河を10年掛けて竣工しています。

この運河のおかげで秦は膨大な農地を確保できて、軍兵糧に悩む事は無くなりました。

そして、多額の税に苦しむ六国から難民を何十万も受け入れて秦の民としました。

農民が皆、秦の国を選ぶことで、他国の人口は大きく減り、農業も経済も破綻することになりました。

戦いの前に、他国の中身を吸収して行ったのです。他国は封建制度なので、一部の貴族や王族だけが裕福な暮らしをして、民は奴隷同然でしたが、秦は法治国家で身分を問わず能力のある者が出世出来るシステムで、民も皆法に守られていました。

漫画のキングダムの主人公、信が始皇帝のドラマでも中盤から大活躍で今は大将軍となっています。

信は一介の貧しい農民でしたよね。李信というこの主人公の子孫は後に唐王朝を開きます。多くの中国の王朝にはかれの子孫の血が流れています。

これも、秦が法治国家であったからです。

そして、天下統一を目指す志が王には一番必要なのです。これがあって初めて王朝を開くことができます。

 

さて、ここで、長相思に戻りますね。

西炎王がソウゲンを次の王にしたのは、ソウゲンが自国だけでなく、常に天下を見渡す広い視野を待っていて、天下統一をその先の目標としていたからです。

皇太子になれると目論んでいた五王やその息子達など王位継承権のある王族は皆、自国にしか目が行ってない。凄く狭い視野で他国と渡り合えるわけがありません。

始皇帝になる嬴政も趙から秦へ戻ってからはまだ年端も行かない頃であったにも関わらず、天下統一を口にしていました。だから、祖父も父もこの子しか、先祖代々の宿願を遂げるものはいないと早くから後継者と認定していたのでした。

長相思で、西炎王やコウレイ国王がソウゲンを次代の指導者と認めていたのと同じですね。

そして、その嬴政の強い意思とカリスマが王族や家臣にも分かると、まだ子供ではあるが、嬴政が王朝を開いてくれる未来にかけようと一致団結していくのでした。

ソウゲンの場合も同じですね。何も持たない人質で苦労をしながらも、己の道を天下統一の志で切り開いていきます。

最初は塗山璟や赤水豊隆など数人の志を共にする者達で始まり、中原の氏族を味方にする事で西炎国の国王につきました。

シーズン1はこれで終わりですが、シーズン2でどのように天下統一がされるのかが、描かれることになるでしょう。

長相思はファンタジーラブロマンスですが、背景にこの中国で最初の王朝成立が設定されている事で、骨太い奥行きがでて、壮大な舞台となっています。これが、名作たる所以にもなっていると私は思いました。

 

シーズン2では相柳の戦死が予告されていますが、こう言う舞台背景を考えると、より意味のある戦死となり、荘厳さが増すと思います。

かなりカットされているらしいですが、SNSに流れてくる映像では、

凄惨さの中にもこれほど美しく悲しく神々しい戦死はこれまでにもあったろうか?!

と感動に魂が震えるような名シーンのようですね。

沢山撮って選りすぐりにしたと思って、シーズン2を楽しみに待ちたいと思っております。